株式会社三井E&S様

コンテナ用岸壁クレーンの構造物内部をIBISで点検

 株式会社三井E&Sは、船舶用大型エンジンや産業機械、港湾物流システムなどを手がける機械メーカーです。1967年に日本初のコンテナ用岸壁クレーンを神戸港に納入したのを皮切りに、2000基以上のクレーンを国内外の港に納めてきました。同社ではそんなクレーンのアフターサービスに用いるツールのひとつとして、IBISを使ったクレーン構造物内部の点検を行っています。今回はそんな三井E&Sの取り組みについて紹介しましょう。

作業者にとって危険で作業しづらい過酷な環境下での点検

 コンテナ用岸壁クレーンは、潮風にさらされるなど厳しい環境に設置されています。倒壊などによって人命や財産、社会経済活動に重大な影響を及ぼす恐れがあるとされることから、コンテナ用岸壁クレーンは、港湾関連法令の中で重点点検診断施設に位置付けられています。2013年には港湾法関連法令が改正され、こうした重点点検診断施設については、「港湾荷役機械の点検診断ガイドライン」に基づいて、納入してから15~20年目に詳細定期診断を行うことが示されています。

 この詳細定期診断では、鋼材で箱状に作られたクレーン構造物の内部を、マンホールから人が入って目視で点検します。ただ、構造物の内部はとても狭く暗いうえ、「構造物の中にはめったに人が入らないため、作業するための足場がなく、中に入って目視で点検するのは非常に困難な作業でした」(中塚氏)といいます。

 さらに構造物の内部は普段密閉されていて、鋼材が錆びる、つまり酸化することで、内部の酸素が少なくなってしまうことから、人が入るのはとても危険な箇所です。そのため、構造物の内部に人が入るには、酸素欠乏危険作業主任者という資格を取得し、あらかじめ外部の空気を取り入れるために、ダクトをマンホールから内部に入れて、十分換気する必要があります。「ダクトを入れて何時間か空気を循環させた上で、作業者は計測器で酸素濃度を計りながら入らなければならない。また、稼働しているクレーンの構造物の内部にはケーブルやさまざまな機器が設置され、人が通れなくなってしまうことが多い」(丹生氏)といいます。

IBISを熟知した機体メーカーが自ら運航するサービス体制を評価

 こうしたクレーン構造物内部の点検に、三井E&SではIBISを導入する取り組みを2022年から始めています。同社ではそれまでもクレーン構造物の内部を飛行できるドローンを探していました。通常の小型ドローンの場合、壁面と機体が接触すると、機体が吸い付いてしまい飛行を続けられなくなるものがほとんどだったそうです。そんな中でIBISは、クレーン構造物の中で飛行させたところ、「壁にぶつかっても安定した飛行ができることが、作業導入の決め手になった。機体が小さく軽いので構造物を傷めることもない」(吉田氏)といいます。

 さらに吉田氏はIBISのメーカーであるリベラウェアが、自らドローンを運航するサービスを提供していることも評価したとのこと。「機体メーカーにこうした点検を依頼すると、実際に運航するのは他のドローン事業者であったりすることが多い。リベラウェアのようにメーカーでありながらドローンを使ってサービスを行い、そのうえ、私たち点検結果を診断・評価する側の意図まで汲み取って的確に撮影を行えるところはなかなかない」(吉田氏)と評します。

 IBISを使ったクレーン構造物内部の点検は、マンホールからIBISを進入させ、機体を上下に移動させながら内部を動画で撮影します。操縦者と補助者はマンホールの外からIBISをオペレーション。万が一、IBISが制御不能になった場合でも回収できるように、機体にテザー(糸)を付けて、マンホール付近からテザーを伸ばしながらIBISを飛行させます。こうしたIBISによる点検に対して丹生氏は、「内部が格子状になっていて人が通れないようなところでも、IBISはその隙間を見つけて奥まで進入し、箱状になっている構造物の四隅までしっかり撮影できたことにすごいと思った」と評価します。

マンホールからIBISを進入させ、クレーン構造物の中を上下させて壁面を撮影する。

安全性向上と作業時間短縮に加えて、映像の共有が多くのメリットを生む

「メリットを挙げたら数えきれない」(丹生氏)というIBISによる点検。酸欠の危険性のある構造物内部に作業者が入らなくて済むため、安全性がはるかに向上すること。また、構造物内部で人が作業しないため換気の必要がなく、ダクトや送風機といった換気に必要な機材の準備と、換気にかかる時間を省くことが可能です。

 また、「これまでは真っ暗な中で人がカメラで劣化箇所を撮影していたが、カメラの撮影能力の低さに加えて、人が行うことなので、どうしても劣化箇所の撮影漏れがあったりする。一方、IBISなら動画で面的に撮影するため、点検漏れが少ない」と丹生氏。さらに、これまで物理的に見られていなかった部分が、IBISによって可視化できることや、構造物を面的に動画で撮影することによる撮影範囲の拡大は、点検品質を大きく向上させたといいます。

 なにより、動画という形でデータ化するというIBISの点検スタイルは、データの共有ができるという大きなメリットを生みます。現場から送られてきた動画を点検者がオフィスで見て診断すればいいため、点検者自身が現場に行くことなく、複数のクレーンを効率よく点検することが可能。また、次の世代の作業者に点検の技術を伝える場合にも、暗くて狭い構造物内部に入ることなく、動画を見ながら技術の伝承ができる」と吉田氏。さらに、「点検結果を見て補修などの施工を決めるが、動画があれば施工が必要な場所が事前に把握できるため、調査期間が短縮できる」(丹生氏)と付け加えます。

IBISの映像を次世代クレーンモニタリングシステム(CARMS)と連携することも

 三井E&Sではドローンによるクレーンの構造物外観点検をサービスとして提供しています。今後は詳細定期診断の中で、IBISを使った構造物内部の点検を提供していくことを検討しています。さらに「これまでにも定期診断に加えて、お客様からはスポットで内部を見たいというお話をいただいたことがあった。今後はそういったときにドローンを使って点検を行うという前向きな提案ができる」(吉田氏)としています。

 また、同社では撮影画像と点検結果を管理するクラウドサービス「次世代クレーンモニタリングシステム(CARMS)」を提供しています。「今後、IBISで撮影した動画から画像を切り出して、CARMSに連携する可能性もある」(吉田氏)としています。

株式会社三井E&S 物流システム事業部 テクノサービスセンター 技術グループ 丹生大智氏(左)、吉田健治氏(中)、中塚翔氏(右)

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