IBISのレンタルと点検サービスの両面で、幅広い顧客のニーズに応える
日本初の測定器レンタル会社として1976年に創業したオリックス・レンテックは、測定器や分析器、医療機器、ロボットといったハイテク機器のレンタルを中心としたサービスを展開しています。その中でドローン事業は2017年に新規事業としてスタート。ドローン機材のレンタル、販売に加えて、屋内外の設備の撮影をする点検サービス、さらに講習を行っています。そんなオリックス・レンテックのIBISを使ったサービスについて紹介します。
一般的なドローンでは飛行が難しい屋内点検向けとしてIBISを導入
オリックス・レンテックは計測器をはじめとしたハードウェアのレンタルを中心に幅広い顧客に対してサービスを行っていますが、とりわけ製造現場での省力化や生産性向上などさまざま課題解決に応えることが多いといいます。そのなかで、同社は設備の点検向けに劣化診断などを行うための三次元計測器をはじめとした計測器も提供しており、同時に機器を携えて現場で計測や分析を行うサービスを行ってきました。2019年からドローン事業の一環としてインフラや各種設備の点検箇所の撮影を行う点検サービスをスタートさせ、これまで培ってきたノウハウを生かし、という形で顧客の課題解決を支援しています。
ドローンの引き合いが多いのは、プラントや工場、鉄塔や送電線の点検だそうです。屋外にある設備の点検にドローンを利用するメリットが理解されると、ドーム型スタジアムの天井や製鉄所のボイラーなどの屋内や設備の内部といった非GPS環境での点検の需要が高まってきたといいます。(石井氏)といいます。そこで同社では屋内点検に特化したドローンとして、リベラウェアのIBISを導入しました。
狭小空間にどこまで入れるか見極めることが大事
「長年、レンタルやサービスを通じて製造現場の課題解決に取り組んできた中で、ドローンにとっての非GPS環境、つまり屋内の設備点検に対する需要は年々高まっていることを感じる。ドローン市場の調査を進めていくなかで、ドローンの製品開発や、パイロットを派遣するサービスを展開するリベラウェアにメリットを感じた」(石井氏)ことが、IBIS導入のきっかけだといいます。
オリックス・レンテックのIBISを使ったドローン点検サービスでニーズが高いのは、建造物の天井裏をはじめとした狭小空間のほか、ボイラーや煙突といった設備の内部の点検です。こうした狭小空間では、一般的なドローンを飛行させることはかなり困難を極めます。また、IBISは対象物に接触しても、小型かつ軽量のため対象物への影響が小さく、壁にぶつかっても姿勢を崩さない飛行制御となっているため接触することで墜落する可能性が低いのも特徴のひとつです。石井氏は「点検対象に接触、そして接触した後にどう復帰するのか、といったことも含めて、どこまで狭小空間の奥まで入っていけるのかを見極めることが運用上欠かせません。単にドローンのハードウェアに対する技術だけでなく、こうした運用に対する知見、リスクヘッジするためのノウハウをリベラウェアが持っているということに魅力を感じている」といいます。
人が入れないことでできなかった点検を、IBISなら実現してくれる
一般的に高所を点検する場合は、足場を設置して作業を行います。そこには足場の設置コストが発生するほか、足場の設置、点検、解体するという一連の作業の間、設備を稼働できないため、その間の稼働停止による損失が発生します。そこにドローンを使うことで、こうした時間的、費用的な損失を抑えることができます。また、人が進入するには危険が伴う空間でドローンを使えば、点検に従事する作業者を危険から遠ざけることができます。IBISを使うことによって、「人が立ち入りにくい場所を新たに点検できることで得られるメリットは大きい」(石井氏)といいます。
また、従来の方法では人が点検対象を直接目視したり、人がカメラを使って動画撮影を行ったりしています。IBISを使えば、安全な場所で撮影ができ、さらに映像に画像処理を行い、オルソ、点群、三次元データを作ることができます。こうしたデータをAIで解析することで、人が評価・判断することなく劣化などの変化や異常を発見することが可能になるといいます。また、IBISによる点検を定期的に行うことで、前回と今回のデータを比較して劣化の度合いを検出することも可能に。「今、インフラにおける予防保全は注目度が高まっている一方で、どうやったらそれができるのかまだ難しいテーマだ。しかし、こうしたデータを積み重ねることで、どこが壊れやすいか、修復すべきかといった判断を効率的に行うことができる」(石井氏)といいます。
お客様によって千差万別な課題を、サービスの形で解決する
リベラウェアのIBISは、自動的に安定したホバリングができるドローンに比べて、「パイロットに操縦スキルと空間認識能力という点で、高いレベルが求められる」(石井氏)といいます。そのため、オリックス・レンテックではIBISをレンタルで利用するユーザーに対して、リベラウェアの講習プログラムを提供しています。まったくドローンの経験がない人の場合、おおよそ2~3か月でIBISを飛ばせるようになり、そこで初めて実務に入れるようになるといいます。また、IBISはドローンを目視しながら飛ばすのではなく、カメラの映像を見ながら飛行させるため、「目視でのドローン操縦経験がある人よりも、初めてドローンを操縦される人の方が抵抗なく取り組めるケースもある」(石井氏)といいます。
こうした講習と同時に、オリックス・レンテックではIBISを使った点検を請け負っています。「レンタルの場合、ドローンを使うのはあくまでもお客様なので、我々がお客様の悩みには直接触れることができない。一方、点検サービスとして提供する場合は、お客様の本当に困っていることを事前に細かく伺う必要があるため、問題の根幹の大事なポイントを押さえて取り組むことができる。また、点検でレポートしなければならないデータも、お客様によって千差万別。問題箇所だけを挙げればいい場合もあれば、点検対象すべての状態を報告しなければならない場合もある。また、同じ劣化でも閾値が“2mm”あるいは“1cm”と大きく違うケースもある。IBISでお客様のさまざまな課題の解決策を最大限引き出すように取り組んでいる」(石井氏)といいます。
自動巡回の技術を応用して、物流倉庫の棚卸といった使い方も
オリックス・レンテックとして今後、IBISに期待することとしては「ボイラーのような高温の環境下での撮影の場合、人が入れるまで温度が下がるのを待っていると何日もかかり、その間は何もすることができない。しかし、例えば80℃の中でドローンを使って点検が可能になると、設備の補修部品を数日早く発注することができ、結果として設備の稼働を止めている時間を短くできる。たとえそれが通常の低温環境で点検した時と100%同じではなくても、60%程度の成果を得ることができるなら、需要は十分考えられる」と石井氏。
また、同社では物流倉庫で使われるAGV(自動搬送ロボット)といったソリューションも扱っていることもあって、「“ドローン×物流”というテーマで、例えば自動巡回点検技術を応用した棚卸や、その棚が空いているかどうかといったことを調べることができたらまた新しい利用シーンが生まれる」(石井氏)と期待を寄せています。
オリックス・レンテック株式会社 事業戦略本部 事業開発部 ロボット・ドローン事業推進 チーム 石井智浩主任