株式会社デック 様

更新水道管の出来栄え確認と塗装品質の経年比較確認に工事区間全線の管内を撮影

株式会社デックは水道管の敷設や耐震化も含めた更新工事、水管橋や発電所の水圧鉄管といった、おもに水道インフラ関連事業を手がける建設会社です。中でもSDF工法(ステンレス・ダイナミック・フレキ管内挿)や、PIP(パイプ・イン・パイプ)工法といった独自の工法による水道管のリニューアル工事では数多くの実績を挙げています。2022年3月から2024年3月にかけて神奈川県内で実施した水道管の更新工事では、PIP工法で敷設した水道管の内側の塗装の品質を確認するのにIBISを利用しました。今回はそんなデックの取り組みについて紹介しましょう。

直径80cmの水道管内部を人が腹這いになって進む品質確認作業

道路などの地下に埋設されている老朽化した水道管の更新では、さまざまな工法が採用されていますが、デックが神奈川県内で実施した更新工事は、PIP工法と呼ばれこの工法は、既設管の中に内径に近い新しい鋼管を挿入し、それを溶接で接続して塗装で仕上げるというもので、老朽管と新設管を取り換えるのではなく、老朽管の中に新設管を挿入していきます。新設管を地下に降ろす部分のみ道路を開削すればいいため、長期間道路を規制する必要がないというメリットがあります。

 デックではこの工法で敷設した新設管の溶接や塗装の仕上げを確認するために、従来は人が管の中に入って溶接部分の写真を撮影していました。この作業では、直径約80cmの管の中を人が腹這いになって進み、撮影をする必要があるといいます。そこでデックでは、この品質管理にドローンを使う計画を立てました。

「今回の工事は、価格と価格以外の要素を総合的に評価する『総合評価落札方式』であり、入札者が示す価格と技術提案の内容を総合的に評価し、落札者を決定する方法での受注でした。弊社はその技術提案で、『品質管理として最終的な出来栄え確認と、経年経過後の塗装品質比較確認のため、内面塗装完了後にドローンで管内全線を動画で撮影し、記録して提出する』という内容を提案。そのために内径80cmの管の中を飛行できるドローンを求め、KDDIスマートドローンに相談していた」(井上氏)といいます。

 KDDIスマートドローンでは、「数あるドローンの中で天井裏が飛行可能で、狭小空間での点検に実績がある」(山崎氏)という点でIBIS2をデックに提案。特に水道管の内部のような狭い空間では、多くのドローンが自機の起こすダウンウォッシュの影響で飛行が安定しないのに対して、IBIS2はこうした狭所でも安定して飛行ができる設計であるという点も評価されているといいます。

株式会社デック工事室 井上歩氏

現場での施工箇所だけでなく管内側を全線にわたって記録できるメリット

 今回の点検では約300mの新設管の中でIBIS2を飛ばし、管内の塗装や傷、溶接の状態などを動画で記録。IBIS2が撮影したデータを見て、「映像がとても鮮明」(井上氏)という印象とともに、「ドローンの操縦技術もさすがと思わせるものだった」(井上氏)という評価をいただきました。

またこの取り組みは、「敷設した新設管内面の塗装の確認」と「経年経過後の品質比較確認のために記録を残す」ことが目的です。ひとつ目の目的である敷設後の内面の確認では、目標通り管内の施工状態を、全線くまなく連続して記録することができました。特に今回の区間では終端部がクランク状になって下がっていることに加えて、途中3カ所にバタフライバルブ(開閉弁)があり、開いた状態でも通れる幅が30cm程度しかないこともあり、人が全線にわたって確認の記録作業を行うのには困難が伴います。しかし「ドローンはバルブを通り抜けて、一段下がっている区間の終端まで行き、無事に帰ってきて、適正な施工の確認ができた」(井上氏)といいます。

 さらに、従来はおもに溶接部のみを写真で記録していましたが、IBIS2では連続した動画で全線を撮影するため、「溶接部だけでなく工場で塗装したその他の部分すべての損傷の有無の確認と記録ができたこともメリット」(井上氏)だったといいます。同時に全線を映像データの形で記録しているため、新設管の経年変化を比較することも可能になったことも大きなメリットとして井上氏は挙げます。

KDDIスマートドローン株式会社ソリューションビジネス推進1部 山崎靖博氏

今後は縦断に変化のある管や小径管の確認・記録に広げていきたい

道路の下に埋設された水道管の工事を行う場合、どうしても地上の道路の規制が必要になります。そのため、交通の影響の少ない夜間に作業を行うだけでなく、作業時間をなるべく短くする必要があります。今回のような品質確認の作業では、従来の方法で人が管の中に入って必要な個所の撮影と記録を行う場合、およそ3日かかるといいます。一方、IBIS2を使った撮影では、工事の対象区間を2日で記録し終え、大きく工期を短縮することができました。

 デックではIBIS2の採用こそ今回が初めての例となりましたが、すでに一般的なドローンは利用しており、管の外側の確認は、通常のドローンで対応可能だといいます。また、今回のような管内の確認であっても、管が平坦であれば、車輪の付いた機器で対応できるそうです。しかし、今回のように「縦断に変化のある狭い管内の確認は、IBIS2のような限られたドローンでしかできないと感じた」(井上氏)といいます。

 そのため「立ち上がり管や伏せ越し(ふせごし)といった縦断に変化のある管内の確認や記録のツールとして検討していきたい」(井上氏)といい、さらに、今後は今回よりもさらに径の小さな管内部の確認・記録に使っていきたいとしています。

株式会社デック工事室 井上歩課長代理(右)/KDDIスマートドローン株式会社ソリューションビジネス推進1部 山﨑靖博氏(中央)/株式会社Liberawareスマート保安事業部伊藤弘毅部長(左)

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