株式会社ウイルテック 様

ドローンメーカーのアフターサービスをワンストップで提供することを目指す

1992年創業のウイルテックは、製造請負・製造派遣をはじめ、機械・電子系技術者派遣、保守・メンテナンスサービスなどを提供することで「モノづくりを支援」している会社です。さらに近年では修理や部品管理、コールセンターといったアフターサービス、工場・倉庫で稼働するロボット関連サービスなど事業領域を拡大しています。昨年から、保守・メンテナンスサービスの一環として、IBISを使った点検サービスに取り組んでいます。今回はそんなウイルテックのドローンに関する取り組みを紹介します。

株式会社ウイルテック カスタマーサービス事業本部
取締役本部長 西 隆弘 様(左中)
カスタマーサービス事業部 部長代理 森元 達也 様(左外)
カスタマーサービス事業部 サービスソリューション課 谷合 拓也 様(右外)

製造設備の巡回点検まで見据えたドローンサービスの導入

ウイルテックがドローンを手がけるきっかけとなったのは、太陽光発電設備のメンテナンスでした。近年、同社では保守・メンテナンスサービスのなかでもエネルギー関連に注力しており、太陽光発電設備のパワーコンディショナーや蓄電池のO&M(オペレーション&メンテナンス)に取り組んでいます。そんな太陽光発電設備のパネルの点検にドローンを活用しようとしたのですが、「すでに太陽光パネルのドローン点検の市場はすでに参入業者も多くレッドオーシャンだった」(西氏)そうです。

そこで同じドローンを使った“点検”でも、インフラをはじめ土木・建築分野でニーズを探り始めました。「ウイルテックにはグループ企業にワット・コンサルティングという建設系の企業があり、橋梁や住宅の壁面、屋根裏といった場所の点検に使えるのではないかと考えた」(西氏)といいます。そこで、一般的なドローンを使ってこうした構造物や設備の点検サービスの検討を始めたのですが、その中でリベラウェアのIBISに出会いました。

「当社が製造業の請負サービスを提供していることから顧客にメーカーが多い。工場の高所にあるクレーンも含めた設備や計器の点検では、これまでは点検者がそこまで上って作業をしていた」(西氏)といいます。ウイルテックではこうした作業をドローンに置き換え、さらには天井裏や広く構内といった屋内全般の点検に使えるのではないかと検討を開始。さらに西氏は、IBISには自動飛行の機能も追加することができ、この機能を使った自動巡回にも期待を寄せていると言います。

3か月間、リベラウェアに出向して操縦技術と点検ノウハウを学ぶ

プロジェクトデザインセンターのRobotショールーム&実証スペースでIBISを飛行させる谷合氏。

ウイルテックの中でIBISを使ったサービスに取り組むのが谷合氏です。同氏はウイルテックの自動搬送ロボット事業のエンジニアであったこともあり、“空飛ぶロボット”であるドローンの担当として白羽の矢が立ちました。「ドローンどころかラジコンの経験すらなく、プロポ(送信機)による遠隔操作を体験するところから始めた」(谷合氏)といいます。

谷合氏は3か月間、ウイルテックからリベラウェアに出向して、IBISを使った狭所点検サービスの業務に従事しました。「IBISを飛ばし始めた頃は、何枚プロペラを折ったかわからない」という谷合氏。リベラウェアのスタッフと狭所点検の業務に従事する傍ら、空いた時間は自主的にIBISの操作を練習し、最初の1か月半でIBISを飛行させるコツをつかんだといいます。

東北にあるバイオマス工場の炉内の点検がデビュー戦だったという谷合氏。「あまり大きくない比較的新しい炉であり、作業時間もゆっくりとれたこともあって、緊張しましたが検証チームからは綺麗に撮影できているとコメントをもらい安心しました」(谷合氏)。

一方、東北地方のペデストリアンデッキの箱桁内の点検は、1週間以上かけて取り組む広大な空間でした。梁と梁の間が20~30cm程度と狭く、潜り抜けるのが大変なだけでなく、真っ暗な大空間に数多くの梁が並んでいるペデストリアンデッキの内部。「FPVで飛行していると自分がどこを飛んでいるか、どうやったら帰って来られるかが不安になった」と谷合氏。大空間の中で迷子になる可能性もあるため、バッテリーの余裕を見ながら飛行させたりするなど、IBISを飛ばし始めてから半年くらいたってからの現場だったこともあって、自身のレベルアップにもなったといいます。さらに、1月の夜に操縦者は屋外で操縦するということもあって、「いかにバッテリーを冷やさず暖かい状態を保っておくかや、操縦に影響しない防寒対策など、飛行技術以外の部分でも試行錯誤することで成長できました」(谷合氏)といいます。

地上を走るロボットに空中を飛ぶドローンを組み合わせたDXの姿

ウイルテックの社員に対するIBISを使った操縦技術の講習の様子。

リベラウェアではIBISのユーザーに対して、基礎的な操縦技能の講習を行っていますが、ウイルテックの谷合氏のようにリベラウェアに出向して取り組んだ例は他にありません。その狙いを西氏は「ウイルテックがリベラウェアのサービスプロバイダーという位置づけになるため」だといいます。「ウイルテックがただIBISをレンタルして点検サービスを行うというのではなく、これまでやってきたアフターサービスのノウハウを生かして、ユーザーが使っているIBISが壊れたときの修理や、もっと数が見込まれるような量産化が進んだ際のOEM、さらにはヘルプデスクといったサポートなど、我々がワンストップサービスを謳っているサポート事業を、リベラウェアのIBISという商材に対して提供できないかと考えている」(森元氏)といいます。

その第一歩として、自動搬送ロボットで同じような事業に取り組む谷合氏自らがドローンを飛ばすことでした。操縦技術を含めたドローンに対する知見を蓄積することで、今後のウイルテックのドローン事業のビジョンを描くのが狙いです。「今は自動搬送ロボットだけですが、将来的には空飛ぶロボットであるドローンと地上を走るロボットを組み合わせることで、新しい価値が生まれるのではないか。例えばロボットがドローンを運んで、必要な場所になるとそこからドローンが飛んで周囲を撮影して棚卸をするとか。現在、工場や物流倉庫の点検や棚卸といった人の手で行われている定期的な業務をDX化できるのではないかと思っています」(谷合氏)といいます。

ウイルテックは“IBISのサービスプロバイダー”に

IBISによるサービスの人材教育の拠点となるプロジェクトデザインセンター。

ウイルテックでは2022年10月、大阪府吹田市にプロジェクトデザインセンター(PROJECT DESIGN CENTER)を開設しました。同センター内にある「ROBOT DX Lab.(ロボット展示施設)」では、現場を想定した仮設スペースで自動搬送ロボットのPoCやデモンストレーションを実施し、顧客に対して導入に向けたプレゼンテーションを行っています。同社ではすでにIBISによるサービスを行える人材育成に取り組んでいて、神奈川県の拠点で操縦訓練などを行っており、今後は、プロジェクトデザインセンターでもIBISを使った実証や、人材育成を行っていくとしています。

「IBISを使った点検の対象となる施設や工場は地方にあり、今後、IBISを使った点検を普及させていくには、ドローンを扱う人材のローカライズが求められる。すでに我々と一緒にサービスを提供しているパートナー企業が全国にあり、そうしたパートナーにノウハウを広げていきたい」と西氏。さらに「リベラウェアのようなドローンメーカーにはますます技術開発に注力してもらっていいドローンを作ってもらうために、点検サービスや量産化されたときのリペア、レンタルしている顧客に対するヘルプデスクといった外回りのアフターサービスを我々が手がけていきたい」(西氏)としています。

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